

南の森弐番街ホームページ


南の森弐番街 「俳句と遊ぼう」にようこそ!
令和元年(2019)に4人の会員で始まった「みなミニ句会」も、今では倍以上に膨らみ、皆さんの個性あふれる俳句もぐんぐんと上達しています。このページでは、過去から現在に至る作品の中から、季節に合った「今月の俳句」、そして直近の句会の作品の中から佳句を取り出してご紹介してゆきます。ご愛読いただき、ひとりでも多くの方が俳句に興味を持っていただければ幸いです。

一昨年夏に「俳句と遊ぼう」(文學の森刊)を出版しました。クイズ形式で古今の佳句名句に親しんでいただこうというものです。柳瀬川書店にも並べてもらっていますので、お手にとっていただければ幸いです。
Info
(中村千久)
![和紙夏-[更新済み].png](https://static.wixstatic.com/media/a69873_54747ae8b507458f80543d1397fc582d~mv2.png/v1/fill/w_280,h_99,al_c,q_85,usm_0.66_1.00_0.01,enc_avif,quality_auto/%E5%92%8C%E7%B4%99%E5%A4%8F-%5B%E6%9B%B4%E6%96%B0%E6%B8%88%E3%81%BF%5D.png)
今月の俳句
囃されて爪先弾む阿波踊 朱々子
「踊る阿呆に見る阿呆♪」という徳島の夏の風物詩である「阿波踊」の句。街中が鉦と太鼓、掛け声で沸騰し、「連」と呼ばれるいくつもの踊り手の集団が街を練り歩くのですね。上五中七、特に「爪先弾む」がまさにあの動きを彷彿させます。作者が分かると、これは杉並の阿波踊を詠んだのかとも思いました。
岸風三楼に〈手をあげて足をはこべば阿波踊〉というよく知られた句があります。



句会より

行く夏や磁石の先の剣岳 良
兼題句です。「剣岳」は北アルプス立山連峰にある3千メートル級の山で、日本百名山にも名を連ね、堂々とした山容を誇る山です。方位磁石の北を指す針の先に剣岳が見えたのです。季語の「行く夏」からは、北アルプスの短い夏が終わり、その先にはもうすぐ雪が覆う季節が控えていることが感じられます。

砂鉄採り磁石で遊ぶ夏休み 羔
紐の先に馬蹄形をした磁石を括りつけて砂浜を引き摺ってゆくだけの昔の子どもの遊びでした。すると砂に混じった「砂鉄」がくっついて来る。家に戻つてから、集めた砂鉄を画用紙にばらまいて、紙の下を磁石で撫でると砂鉄が動き始める。そんな遊びをしたのが、昭和の子どもの「夏休み」だったのです。

星屑のあやす夜泣きの油蟬 箒星
地上に出て一週間で命を終える蟬。夜昼構わずに鳴いて求愛の合図を送らなければなりません。夜になっても木々の中で鳴き続けますね。それを「夜泣き」をする幼子に見立てた作者です。そんな蟬を空に光る「星屑」が「よしよし!」とあやしているのだと……。深い母性から生まれた句ですね。男連中には逆立ちしても真似できない!

秋立つや橋の真中の方位盤 千榮子
兼題から発想を飛ばしたものです。どこかは分かりませんが、橋の真ん中あたりに東西南北を示す「方位盤」を見かけたのです。それには、それぞれの方角にある山の名前などが彫り込まれていたかもしれません。橋の上に佇む作者に、季節の変わり目を告げる風が吹いている。取合せた季語の「秋立つ」から、そんな気配が感じられます。

磁石置く折り目破れし登山地図 千久
その昔、ワンダーフォーゲル部の顧問をしていた頃には、夏になると部員を引率して北アルプスに出かけたりしたものでした。現地で長年お世話になっていたコーチ役のガイドさんと合流しての登山です。山小屋で過ごす夜には、磁石を取り出して部員たちに地図の読み方などを教えてくれたりもした、そんなことを思い出しながら、こんな一句を捻り出しました。